故人の子、母、兄弟の相続放棄を順次行った事例

分類相続・相続放棄
業務の内容故人の遺産調査・相続放棄
依頼者の立場故人の子、母、兄弟
相続人ご依頼者
担当弁護士加藤貴紀

ご相談内容

故人の子である山森様(仮名)は、生前疎遠になっていた故人が亡くなったことを知りました。

山森様は、故人の生活状況がどのようなものだったのかわからなかったものの、もし借金をしていたらそれを自分が引き継がなくてはならなくなるかもしれないと不安になり、当事務所にご相談に来ました。

相談の際、山森様から以下のような疑問をお話しいただきました。

  1. 故人の資産状況が全くわからない状況において、どのような相続手続きをすればいいのか?
  2. 自分が相続放棄をしたら、故人の母であるBさんや、兄弟のCさんに影響はないのか?

山森様からお話を伺った後、当事務所から遺産の調査と、借金があった場合の相続放棄の手続きをご提案し、ご依頼を受けることとなりました。

ご依頼後の対応

ご依頼を受けた後、まずは当事務所で故人の遺産の調査を行いました。

具体的には、金融機関や信用情報機関に照会をかけることで、どのような遺産があったのかを確認しました。

調査の結果、故人には不動産や預金があったものの、それ以上に借金が大きいことが判明しました。

山森様は遺産を引き継がないことを希望したので、家庭裁判所に対して相続放棄の手続きを行いました。

山森様が相続放棄を行ったことで、故人の相続権がBさん(母)に移りました。そして、Bさんが相続放棄を行うと、故人の相続権がCさん(兄弟)に移ってしまうため、山森様の相続放棄の手続きが完了した後、BさんとCさんの相続放棄の手続きを順次行いました。

これによって、相続人全員の相続放棄が完了し、誰も故人の借金を負担せずにすみました。

解決のポイント

本件のポイントは以下の2点です。

  1. 遺産の調査
  2. 各順位の相続人の相続放棄を順次行う

① 遺産の調査

相続手続きを進めるにあたり、まず被相続人の遺産全体を正確に把握することが不可欠です。

遺産には、プラスの財産(積極財産)とマイナスの財産(消極財産)の双方が含まれるため、いずれも漏れなく調査する必要があります。

プラスの財産(積極財産)

プラスの財産(積極財産)の例としては、以下のものがあげられます。

不動産

名寄帳(なよせちょう)や固定資産税課税明細書を市区町村から取り寄せます。

預貯金

金融機関に対して照会をかけて通帳残高証明書を取り寄せます。

株などの有価証券

証券保管振替機構(通称ほふり)に対して照会をかけることで一括して調査します。

その他

自動車や家財・貴金属類などを調査します。

この他にも、被相続人が会社の株主や出資者であった場合には、法人登記の確認も必要となります。

マイナスの財産(消極財産)

一方、消極財産の調査も非常に重要です。金融機関への借入はもちろん、個人間の借用書、未払いの税金・医療費・家賃なども負債に該当します。

信用情報機関(CICJICC全国銀行個人信用情報センター)への照会により、被相続人の借入状況を確認することが有効な手段です。

こうした網羅的な調査を通じて、相続財産の全体像を明らかにすることが、その後の相続放棄を行うかどうかの重要な判断材料となります。

② 各順位の相続人の相続放棄を順次行う

相続の順位

相続放棄は、相続人が被相続人の一切の権利義務の承継を放棄する手続きであり、家庭裁判所への申述によって行います。

民法上、相続人には優先順位があり、第1順位は子(直系卑属)、第2順位は父母・祖父母(直系尊属)、第3順位は兄弟姉妹とされています。配偶者は常に相続人となります。

相続放棄を行うと次の順位の相続人に相続権が移るため、相続放棄は相続人の順位ごとに順次行う必要があります。

負債が資産を大きく上回るケースでは、まず配偶者および第1順位の相続人(子)が相続放棄を行います。これにより相続権は第2順位の直系尊属(父母など)へと移転します。次に直系尊属も相続放棄を行うことで、第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移ります。

最終的に兄弟姉妹も相続放棄を完了させることで、相続人が不存在となり、債務の承継を完全に防ぐことができます。

相続放棄ができる期間

各相続人が放棄できる期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内です。

前順位の放棄により新たに相続人となった方については、その事実を知った時点から3ヶ月のカウントが始まります。

したがって、前順位の放棄が完了した際には、速やかに次順位の相続人へ通知し、手続きを速やかに進めることが実務上の重要なポイントとなります。

相続放棄には期間制限がありますので、遺産の調査や相続放棄の申立てを迅速に行うために弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

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