相続人が行方不明?住所がわからない場合の遺産分割の方法を弁護士が解説
相続人の中に行方不明や住所不明の方がいる場合、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なため、そのままでは手続きを進めることができません。
しかし、戸籍の附票や住民票による住所調査、不在者財産管理人の選任、失踪宣告の申立てなど、法律で定められた適切な手続きを踏めば、遺産分割を進めることが可能です。
この記事では、行方不明の相続人がいる場合の具体的な調査方法から、不在者財産管理人と失踪宣告のどちらを選ぶべきか、後から相続人が見つかった場合の対応まで、弁護士が実務の観点から詳しく解説します。
適切な手続きを選択することで、法的リスクを回避しながら円滑に遺産分割を完了させることができます。
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目次

1. 遺産分割協議は相続人全員の合意が必要
相続が発生したとき、相続人の中に行方不明の人がいると遺産分割の手続きが大きく滞ってしまいます。なぜなら、遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員が参加して合意することが必要だからです。
たとえ相続人のうち1人でも欠けた状態で行った遺産分割協議は、法律上無効となってしまいます。
特に実務上困るのが、不動産の相続登記や銀行預金の解約手続きです。
法務局や金融機関は、相続人全員が署名押印した遺産分割協議書と、全員分の印鑑証明書の提出を求めます。行方不明の相続人がいると、これらの書類を揃えることができず、手続きが一切進まなくなってしまいます。
このように、行方不明の相続人が1人いるだけで、他の相続人全員が遺産分割を進められなくなります。
2. 相続人が行方不明・住所不明になる典型的なパターン
相続手続きを進めるなかで、相続人のなかに行方不明や住所不明の方がいることが判明するケースは少なくありません。
このような状況は決して珍しいものではなく、家族関係や生活環境のさまざまな事情から生じます。ここでは、実際の相続の現場でよく見られる典型的なパターンを3つご紹介します。
2.1 疎遠になっている兄弟姉妹
相続人が行方不明・住所不明になる最も多いパターンが、長年疎遠になっている兄弟姉妹との連絡が取れないケースです。
特に親が亡くなった際の相続では、兄弟姉妹全員が相続人となるため、何十年も連絡を取っていない兄弟の所在がわからず困ってしまう事例が頻繁に発生します。また、被相続人が高齢の場合、その兄弟姉妹も高齢であることが多く、すでに亡くなっている可能性や、施設に入所していて連絡が取りにくい状況も考えられます。
また、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子(甥や姪)が代襲相続人となるため、さらに連絡が取りにくくなることもあります。
このパターンでは、最後に把握していた住所の住民票や戸籍の附票を取り寄せることで、現在の住所を追跡できる可能性があります。
ただし、転居を繰り返している場合や、住民票を移さないまま転居している場合には、追跡が困難になることも少なくありません。
2.2 前妻の子や認知された子
被相続人に離婚歴があり前妻との間に子がいる場合や、認知された子がいる場合も、行方不明・住所不明となりやすい典型的なパターンです。
このようなケースでは、現在の家族が前妻の子や認知された子の存在自体を知らないこともあり、相続手続きを始めて初めてその存在に気づくこともあります。
前妻の子や認知された子は、被相続人の実子として現在の配偶者の子と同等の相続権を持ちます。そのため、遺産分割協議には必ず参加してもらう必要があります。
しかし、離婚後や認知後に長年交流がない場合、現在の住所はおろか、連絡先すらわからないことが一般的です。
このパターンでは、戸籍謄本を取得することで前妻の子や認知された子の存在と本籍地を確認できる可能性はあります。その後、戸籍の附票を取得することで現在の住所を追跡することが可能です。
ただし、本人が住民票を適切に移動していない場合や、住所地に実際には居住していない場合には、やはり連絡が取れない状況となります。
また、前妻の子や認知された子との関係が良好でない場合、たとえ住所がわかったとしても、遺産分割協議に協力的でないケースもあります。このような場合は、弁護士を通じて交渉を行うことで、スムーズに手続きを進められることがあります。
2.3 海外に移住した相続人
相続人が海外に移住していて連絡が取れない、または連絡を取るのが困難なケースがあります。グローバル化が進むなかで、仕事や結婚などで海外に移住する日本人が増えており、相続の場面でもこのような状況に直面することが多くなっています。
海外移住者との連絡が困難になる主な理由は以下の通りです。
第一に、住所の把握が難しいという問題があります。海外に転出する際に転出届を提出していれば、戸籍の附票に「国外転出」と記載されますが、転出先の詳細な住所までは記載されません。そのため、どの国のどの都市に住んでいるのか、戸籍や住民票からは判明しないのです。
第二に、連絡手段の問題があります。海外に住んでいる場合、日本の携帯電話番号は解約していることが多く、メールアドレスやSNSのアカウントなどを知らなければ、連絡を取る手段が限られてしまいます。
第三に、時差や言語の問題もあります。連絡が取れたとしても、時差のために話せる時間が限られたり、現地の言語でのやり取りが必要になる場合もあります。
海外に移住した相続人がいる場合、まずは最後に日本で住んでいた住所地の市区町村で戸籍の附票を取得し、国外転出の記録を確認します。その後、家族や親族、友人などを通じて連絡先を探すことになります。
また、海外在住の相続人と連絡が取れた場合でも、遺産分割協議書に実印を押印してもらう必要があるため、日本の印鑑証明書に代わる「署名証明書(サイン証明書)」を現地の日本大使館や領事館で取得してもらう必要があります。この手続きにも時間がかかるため、相続手続き全体のスケジュールに影響を与えることがあります。
さらに、海外在住の相続人が日本に一時帰国できない場合、遺産分割協議を郵送やオンラインで進める必要があり、時間と手間がかかることも考慮しなければなりません。
3. 行方不明者の住所調査の方法
相続人の中に行方不明や住所不明の方がいる場合、まずは可能な限り住所を調査する必要があります。戸籍制度や住民票の制度を利用することで、多くのケースで現在の住所や最後の居住地を特定できます。
ここでは、具体的な調査方法について順を追って解説します。
3.1 戸籍謄本による相続人を確定する
住所調査の前提として、まず被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得して、相続人が誰なのかを正確に確定する必要があります。相続人の範囲が確定していなければ、誰の住所を調査すべきか分からないためです。
戸籍謄本の取得は、基本的には被相続人の最後の本籍地がある市区町村役場で請求します。相続人であることを証明できれば、他人の戸籍であっても取得が可能です。
請求の際には、被相続人との関係を示す戸籍謄本や、請求者自身の身分証明書が必要になることがあります。
被相続人が生前に何度も転籍(本籍地を移動すること)をしている場合は、順番に過去の本籍地をたどって戸籍謄本を取得していく作業が必要です。
この作業により、以下のような相続人の存在が明らかになることがあります。
- 前婚での配偶者との間に生まれた子
- 認知された婚外子
- 養子縁組をした養子
- 疎遠になっていた兄弟姉妹
戸籍謄本には、その戸籍に入っている人の氏名、生年月日、父母の氏名、配偶者の氏名などが記載されており、相続人を漏れなく確定するための基本的な資料となります。
3.2 戸籍の附票や住民票を取得して住所を追跡する
相続人が誰かを確定できたら、次は戸籍の附票や住民票を取得して、その相続人の現在の住所を調査します。
戸籍の附票とは、戸籍が作られてから現在までの住所の履歴が記録されている書類です。本籍地のある市区町村役場で取得できます。
相続人の本籍地が戸籍謄本から判明している場合、その本籍地の市区町村役場に戸籍の附票を請求することで、現在の住民登録上の住所を知ることができます。
戸籍の附票には、氏名・生年月日・住所・住所の変遷履歴・住所を定めた年月日などの情報が記載されています。
戸籍の附票で判明した現在の住所をもとに、その住所地の市区町村役場で住民票を取得することもできます。住民票には、世帯構成や転入日なども記載されており、より詳細な情報を得られます。
ただし、相続人が何度も転居を繰り返している場合、戸籍の附票だけでは現在の住所にたどり着けないことがあります。その場合は、過去の住所地で住民票の除票を取得し、そこに記載されている「転出先」の情報をもとに、次の住所地を追跡していく作業が必要になります。
住民票や戸籍の附票の取得には、正当な理由が必要です。相続手続きのためという理由は正当な理由として認められますので、請求の際には被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本や、請求者が相続人であることを証明する戸籍謄本を添付して請求します。
3.3 弁護士会照会を使った調査
戸籍の附票や住民票による調査でも住所が判明しない場合、弁護士に依頼して弁護士会照会という制度を利用する方法があります。
弁護士会照会とは、弁護士法23条の2に基づく制度で、弁護士が所属する弁護士会を通じて、公的機関や民間企業などに対して必要な情報の照会を行うことができる制度です。
相続手続きという正当な目的がある場合、電力会社やガス会社などの公共料金を扱う企業や電話会社のような機関に対して照会を行い、行方不明者の住所や所在に関する情報を得られる可能性があります。
たとえば、行方不明の相続人が以前住んでいた住所が分かっている場合、その住所を管轄する電力会社に対して「この住所から引っ越した際の新しい住所」を照会することで、現在の居住地を突き止められることがあります。
弁護士会照会を利用するには、弁護士に依頼する必要があり、弁護士費用や照会手数料がかかります。また、照会先の機関が個人情報であることを理由に開示を拒否することもあるため、必ず情報が得られるわけではありませんが、戸籍や住民票の調査だけでは見つからない場合の有力な手段となります。
3.4 住民票の除票・戸籍の附票の除票が取得できる期間
住民票の除票・戸籍の附票の除票とは、転出や死亡などにより住民登録が消除された後の記録のことです。
行方不明者の住所を追跡する際、過去に住んでいた住所から転出先を調べるために住民票の除票・戸籍の附票の除票を取得することがありますが、除票には保存期間の制限があることに注意が必要です。
以前は、これらの保存期間は消除されてから5年間とされていました。そのため、5年以上前に転出した場合は除票が廃棄されており、転出先が分からなくなってしまうという問題がありました。
しかし、令和元年6月20日に住民基本台帳法施行令が改正され、住民票の除票の保存期間が消除されてから150年間に延長されました。この改正により、長期間にわたって住所を追跡できる可能性が高まりました。
ただし、この改正が適用されるのは令和元年6月20日以降に消除される予定だったものに限られます。それより前に消除され、改正時点で既に保存期間の5年を経過していた除票は廃棄されていますので、取得できない場合があります。

4. 行方不明の相続人がいる場合の遺産分割の方法
相続人のなかに行方不明者がいると、通常の遺産分割協議を進めることができません。
このような場合、法律で定められた特別な手続きを利用することで、遺産分割を進めることが可能になります。主な方法として、「不在者財産管理人の選任」と「失踪宣告」の2つがあります。
どちらの方法を選ぶかは、行方不明の期間や相続の状況によって変わってきます。
それぞれの制度には特徴があり、メリットとデメリットが異なりますので、状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。
4.1 不在者財産管理人を選任して遺産分割する方法
4.1.1 不在者財産管理人制度とは?
不在者財産管理人制度とは、住所や居場所がわからない人の財産を管理するために、家庭裁判所が選任する代理人のことです。
行方不明の相続人がいる場合、この管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加します。管理人は行方不明者の利益を守る立場にあるため、法定相続分を下回るような不利な内容での遺産分割には原則として応じません。
不在者財産管理人制度の大きな特徴は、行方不明の期間に関係なく利用できる点です。行方不明になってから年単位の期間が経過していなくても、この制度を使って遺産分割を進めることができます。
4.1.2 家庭裁判所への申立て手続き
不在者財産管理人の選任を申し立てるのは、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。最後の住所地がわからない場合は、不在者の財産がある場所を管轄する家庭裁判所に申し立てることになります。
申立てから選任までの期間は、通常1か月から3か月程度かかります。ケースによってはもっと時間がかかることもあるため、相続税の申告期限が迫っている場合は早めに手続きを開始する必要があります。
裁判所は申立てを受けると、行方不明者の状況を調査し、本当に不在者財産管理人が必要かどうかを判断します。調査の結果、行方不明者の所在が判明した場合は、申立てが却下されることもあります。
4.1.3 申立てができる人
不在者財産管理人の選任を申し立てることができるのは、次のような「利害関係人」です。
- 共同相続人
- 相続債権者(被相続人にお金を貸していた人など)
- 遺言執行者
- 受遺者(遺言で財産をもらう人)
また、検察官も申立てをすることができます。通常の相続の場面では、他の相続人が申立人となるケースがほとんどです。
4.1.4 必要書類と申立書の書き方
不在者財産管理人選任の申立てには、以下の書類が必要になります。
① 申立書
裁判所のWEBサイトからダウンロードすることができます。
② 不在者の戸籍謄本・戸籍附票
不在者の居住地の市役所から取り寄せます。
③ 財産管理人候補者の住民票・戸籍附票
不在者の居住地の市役所から取り寄せます。
④ 不在の事実を証する資料
捜索願の受理証明書、「あて所に尋ねあたりません」などの理由で返送されてきた郵便物、現地調査報告書等を提出します。
⑤ 不在者の財産に関する資料
不動産登記事項証明書、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等を提出します。
⑥ 利害関係を証する資料
戸籍謄本(全部事項証明書)、賃貸借契約書写し、金銭消費貸借契約書写し等を提出します。
申立書には、不在者の情報、申立人の情報、不在の事実、財産の内容、管理人候補者の情報などを記載します。裁判所のWEBサイトには申立書の書式と記載例が掲載されていますので、それを参考にすると良いでしょう。
申立ての際には、収入印紙と連絡用の郵便切手(金額は裁判所によって異なります)が必要です。
4.1.5 予納金の金額と決定基準
不在者財産管理人の選任申立てでは、予納金と呼ばれる費用を裁判所に納める必要があります。この予納金は、管理人の報酬や管理費用に充てられるお金です。
予納金の額は、不在者の財産の内容や額、管理の難易度などによって決まります。一般的には、20万円から100万円程度のケースが多いですが、財産の多さや予想される業務の内容によって金額が変わってきます。
予納金は、管理人の業務が終了した後、使われなかった分は返還されることがあります。ただし、管理人への報酬は裁判所が決定し、予納金から支払われるため、全額が返ってくることは原則としてありません。
4.1.6 管理人選任後の遺産分割協議の進め方
不在者財産管理人が選任されたら、その管理人を含めて遺産分割協議を行います。管理人は行方不明の相続人の代理人として協議に参加し、遺産分割協議書に署名押印します。
ただし、管理人は不在者の利益を守る義務があるため、法定相続分を下回るような不利な内容の遺産分割に応じてくれる可能性は低いです。たとえば、「行方不明の相続人の取り分をゼロにする」といった内容は認められません。
遺産分割協議が成立したら、通常の相続と同じように、不動産の相続登記や預金の解約などの手続きを進めることができます。管理人が受け取った不在者の相続財産は、管理人が引き続き管理することになります。
4.2 失踪宣告を申し立てて遺産分割を進める方法
4.2.1 失踪宣告とは?
失踪宣告とは、長期間行方不明の状態が続いている人を法律上「死亡したもの」とみなす制度です。
失踪宣告を受けると、その人は法律上死亡したことになるため、相続が発生します。
つまり、行方不明の相続人がいる場合に失踪宣告を受けると、その人は被相続人の相続人ではなくなり、逆にその人自身について相続が開始することになります。
不在者財産管理人の制度と異なり、失踪宣告は非常に重い効果を持つ手続きです。そのため、一定の要件を満たさなければ利用できません。
4.2.2 普通失踪と特別失踪の違い
失踪宣告には、「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があります。それぞれ要件と効果が異なります。
| 種類 | 要件 | 死亡とみなされる時期 |
|---|---|---|
| 普通失踪 | 生死不明の状態が7年間継続 | 7年間の期間満了時 |
| 特別失踪(危難失踪) | 戦争、船舶の沈没、震災などの危難に遭遇し、危難が去った後1年間生死不明 | 危難が去った時 |
相続の場面で問題になるのは、ほとんどが普通失踪です。
たとえば、相続人の一人が7年前から行方不明になっている場合、普通失踪の要件を満たすため、失踪宣告を申し立てることができます。
特別失踪は、災害や事故で行方不明になった場合に利用されます。たとえば、船舶事故で海に投げ出されて行方不明になった場合や、大規模な震災で行方不明になった場合などです。
4.2.3 失踪宣告申立ての流れと必要書類
失踪宣告の申立ては、行方不明者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
申立てに必要な書類は以下のとおりです。
- ① 申立書
- ② 不在者の戸籍謄本
- ③ 不在者の戸籍附票
- ④ 失踪を証する資料
- ⑤ 申立人の利害関係を証する資料
申立ての際には、収入印紙と郵便切手が必要です。予納金は、官報公告の費用として数千円程度が必要になります。
失踪宣告の手続きでは、家庭裁判所が官報に公告を掲載します。この公告により、行方不明者本人や情報を持っている人に届出の機会を与えます。公告期間は、普通失踪の場合は3か月以上、特別失踪の場合は1か月以上と定められています。
公告期間が終了しても届出がない場合、裁判所は失踪宣告の審判を行います。申立てから審判まで、通常は6か月から1年程度かかります。
4.2.4 失踪宣告後の遺産分割方法
失踪宣告の審判が確定すると、行方不明者は法律上死亡したものとみなされます。その時点で、行方不明者について相続が開始します。
たとえば、父親が亡くなり、相続人が長男と次男の2人だったとします。次男が7年前から行方不明で、次男の失踪宣告を受けた場合、次男は死亡したとみなされます。
次男に配偶者や子どもがいれば、その人たちが次男の相続人となり、父親の遺産分割に参加することになります。次男に相続人がいなければ、長男が単独で父親の遺産を相続することになります。
このように、失踪宣告を受けると相続関係が変わる可能性があるため、事前に相続関係を十分に調査しておく必要があります。
失踪宣告が確定した後は、法律上死亡したとみなされた不在者の相続人を交えて、改めて遺産分割協議を進めることになります。
なお、失踪宣告を受けた人が後から生きていることが判明した場合、失踪宣告は取り消されます。その場合の法律関係の処理は複雑になるため、失踪宣告は慎重に判断する必要があります。
5. 不在者財産管理人と失踪宣告のどちらを選ぶべきか
相続人が行方不明の場合、不在者財産管理人と失踪宣告のどちらを選ぶべきか迷うことがあります。
不在者財産管理人と失踪宣告では、手続きにかかる期間や費用に大きな違いがあります。
実務上は、迅速に遺産分割を進めたい場合は不在者財産管理人を、時間がかかっても失踪者の相続関係も含めて整理したい場合は失踪宣告を選択することが多いです。
| 項目 | 不在者財産管理人 | 失踪宣告 |
|---|---|---|
| 手続き期間 | 申立てから選任まで数ヶ月程度 | 申立てから宣告まで半年から1年程度(普通失踪の場合は7年以上の不在が必要) |
| 予納金 | 20万円~100万円程度(財産額等により変動) | なし |
不在者財産管理人の予納金は、行方不明者の財産額や管理期間の見込みによって決まります。
裁判所は、管理人の報酬や管理費用を見込んで予納金の額を決定するため、管理すべき財産が多い場合や長期間の管理が予想される場合は、予納金も高額になる傾向があります。
一方、失踪宣告の場合は、予納金はありませんが、手続き自体に1年程度の期間がかかります。さらに、普通失踪の場合は7年間の不在期間が必要であるため、行方不明になってから間もない場合は、そもそも申立てができません。
遺産分割を急ぐ必要がある場合、たとえば不動産をできるだけ早く売却したい場合などは、不在者財産管理人を選任する方が現実的です。
6. 相続人が後から見つかった場合に生じる問題
不在者財産管理人の選任や失踪宣告の手続きを進めている最中、または遺産分割協議が終わった後に、行方不明だった相続人が見つかるケースがあります。
このような場合、すでに行った遺産分割協議や手続きにどのような影響が出るのか、法的な問題について詳しく解説します。
6.1 不在者財産管理人を通じて行った遺産分割の効力
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、正式な手続きを経て遺産分割協議を行った場合、後から行方不明者が見つかっても遺産分割協議の効力は原則として有効です。
不在者財産管理人は家庭裁判所が選任した正式な代理人として、行方不明者の利益を守りながら遺産分割協議に参加しています。そのため、この協議は法的に適正な手続きを経たものとして扱われます。
ただし、行方不明者が戻ってきた時点で、不在者財産管理人の役割は終了します。管理していた財産は本人に引き渡され、その後の財産管理は本人が行うことになります。
6.2 失踪宣告後に行った遺産分割の効力
失踪宣告を受けた後に遺産分割協議を行い、その後に失踪者が生存していることが判明した場合は、より複雑な問題が生じます。
失踪宣告は取り消すことができる制度です。失踪者本人や利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申し立てることができます。
失踪宣告が取り消されると、法律上は最初から失踪宣告がなかったものとして扱われます。これを「遡及効」といいます。ただし、完全に遡及するわけではなく、善意の第三者を保護するための例外規定があります。
民法32条第2項では、失踪宣告後に善意(生きていると知らなかったこと)でなされた行為の効力は、失踪宣告が取り消されても影響を受けないと定められています。つまり、遺産分割協議の効力は保護されることもあります。

7. 弁護士に相談・依頼をするメリット
7.1 迅速な相続人の行方の調査
遺産分割協議は相続人が全員揃わないと行うことができません。一人でも欠けてしまうと遺産分割協議が無効になってしまいます。
相続人の範囲や相続人の住所は、戸籍や住民票の除票・戸籍の附票を取得することで確認できる可能性があります。
ただし、相続手続きは、相続税の申告など期限が設けられているものがありますので、相続人の調査は迅速に行う必要があります。弁護士に依頼することで相続人の調査を迅速に行なってもらうことができます。
7.2 交渉の窓口になってもらうことができる
住所や行方が不明になっている場合、相続人が見つかったとしても、その相続人との関係性が希薄であることが多いです。
そのため、住所が見つかったとしても上手に遺産分割協議の話し合いを進めることが難しいことがあります。
弁護士に依頼することで、他の相続人との連絡ややり取りを全て任せることができます。
7.3 適切な手続きの選択
相続人の居所がどうしても判明しないときは、不在者財産管理人や失踪宣告の手続きを利用することを検討します。
これらの制度はそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらを利用するべきかは事案によって異なってきます。
弁護士に相談することで、どの手続きを利用していくべきか、適切な方法を選択することができます。
8. よつば総合法律事務所が選ばれる理由
8.1 相続チームによるサポート
当事務所には相続に特化した専門チームを設置しています。定期的に開催しているミーティングでノウハウの共有や案件の検討を行うことで、経験豊富な弁護士が依頼者にとっての最良の解決策を見つけます。
8.2 他の専門家との協力によるワンストップ対応
相続が発生したときは、税金の申告や登記などの手続きのために弁護士以外の専門家の協力が不可欠です。
当事務所では、連携している税理士や司法書士、不動産鑑定士と共にワンストップで案件の解決に対応することが可能です。
8.3 アクセス良好な事務所
当事務所は大名古屋ビルヂング内に事務所を構えています。名古屋駅直結でアクセス良好のため、愛知県内の方だけでなく、三重県や岐阜県の方でも気軽にお越しいただくことができます。
8.4 オンラインでの相談可
親族間の相続のトラブルは精神的な負担が大きいことが多いです。当事務所は、早急なご相談に対応するため、依頼者の希望に合わせて電話の他にもZoomなどのオンラインでのご相談を受け付けております。
8.5 初回相談無料
当事務所では、相続に関するご相談は初回60分無料で対応いたします。弁護士費用が発生する場合は、事前にお見積りを作成いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
9. まとめ:悩んだら弁護士に相談
相続人の中に行方不明や住所不明の方がいる場合でも、遺産分割を進めることは可能です。まずは戸籍の附票や住民票で住所を調査し、それでも見つからない場合は、不在者財産管理人制度または失踪宣告の手続きを利用します。
不在者財産管理人制度は比較的早く手続きが進められますが、予納金が必要となります。失踪宣告は7年間の行方不明期間が必要ですが、費用は抑えられます。
これらの手続きは法的に複雑で、書類の準備や裁判所への申立てなど専門的な知識が求められます。相続人が行方不明のケースでは、弁護士に相談することで適切な手続きの選択と円滑な遺産分割の実現が可能になります。
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