遺産の収益物件の賃料は誰のもの?アパートやマンションの賃料を独占されて受け取ることができない場合の対処法を弁護士が解説
「遺産分割が決まるまで賃料を返せないと管理会社から言われた」
このような遺産の収益物件に関するお困りごとはありませんか?
遺産の収益物件から発生する賃料は原則として各相続人が法定相続分に応じて受け取ることができる権利があります。
しかし、特定の相続人が代表者として受け取ってしまって他の相続人が受け取れないというトラブルはよく発生します。
この記事では、遺産分割が終わるまでの賃料は法律上どのように扱われるのか、法定相続分に応じた賃料を請求する権利があるのか、そして独占されている賃料を取り戻すための具体的な手続きについて解説します。
賃料トラブルを放置すると問題が大きくなりやすいため、早めの対応が重要になります。
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目次

1. 遺産相続における収益物件の賃料問題とは
親や配偶者が亡くなり、賃貸アパートやマンションなどの収益物件を相続した場合、遺産分割が完了するまでの間に発生する賃料収入をめぐってトラブルが生じることがあります。
特に、相続人の一人が物件を管理して賃料を受け取っているにもかかわらず、他の相続人に分配しないというトラブルはよく発生します。
このような賃料トラブルは、相続財産の中でも収益物件特有の問題です。通常の不動産や預貯金と異なり、賃貸物件は相続開始後も継続的に収益を生み出すため、誰がいつまでの賃料を受け取る権利があるのかという点が複雑になります。
1.1 賃貸アパートやマンションを相続した場合の賃料収入
故人が所有していた賃貸アパートやマンションなどの収益物件を相続した場合、相続開始の時点から継続して賃料収入が発生し続けます。賃借人は引き続き家賃を支払う義務があり、この賃料は相続財産とは別に扱われることになります。
相続開始後の賃料収入については、以下の特徴があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賃料の発生時期 | 故人の死亡後、遺産分割が確定するまでの期間も継続的に発生 |
| 法的性質 | 相続開始後の賃料は遺産そのものではなく、遺産から生じる果実として扱われる |
| 受取人 | 原則として法定相続分に応じて各相続人に帰属する |
| 管理者 | 実際には物件を管理する相続人が賃借人から受け取ることが多い |
問題となるのは、物件の管理や賃料の受け取りを行っている相続人が、他の相続人に対して適切に分配を行わないケースです。遺産分割協議が長引く場合、数ヶ月から数年にわたって賃料が蓄積されることもあり、金額も大きくなります。
1.2 賃料を独占されるトラブルが発生するケース
賃料を独占されるトラブルは、次のような状況で発生しやすくなります。
まず、故人と同居していた相続人や、生前から物件の管理を手伝っていた相続人がいる場合です。このような相続人は、相続開始後も自然な流れで物件管理を継続し、賃借人から賃料を受け取り続けることになります。
しかし、他の相続人への分配義務を認識していなかったり、自分が管理しているのだから賃料も自分のものだと考えたりすることによってトラブルに発展します。
次に、相続人間の関係が良好でない場合です。遺産分割協議自体が難航している状況では、賃料の分配についても協力が得られず、管理している相続人が賃料を独占して他の相続人に支払わない事態が生じやすくなります。
また、物件の鍵や賃貸借契約書類を管理している相続人が情報を開示せず、どれだけの賃料収入があるのかを他の相続人が把握できないケースもあります。このような情報の非対称性が、賃料トラブルをさらに複雑化させる要因となっています。
2. 相続した収益物件の賃料は法律上誰のものか
相続が発生すると、亡くなった方が所有していたアパートやマンションなどの収益物件は相続人に引き継がれます。しかし、その物件から生じる賃料収入が誰のものになるのかについては、タイミングによって扱いが異なります。
ここでは、法律上の賃料の帰属先について段階ごとに解説します。
2.1 遺産分割協議が成立するまでの賃料の帰属先
相続が発生してから遺産分割協議が成立するまでの間に、収益物件から生じる賃料は誰のものになるのでしょうか。
過去の裁判例によれば、遺産分割協議が成立するまでの賃料は、各相続人が法定相続分に応じて当然に取得するとされています。
つまり、賃料は相続財産そのものではなく、相続人それぞれの固有の財産として扱われ、遺産分割の対象となりません。
たとえば、相続人が子ども3人で法定相続分が各3分の1ずつの場合、遺産分割が成立するまでの間に発生した賃料も、3人がそれぞれ3分の1ずつ受け取る権利を持つことになります。
2.2 法定相続分に応じた賃料の分配ルール
賃料の分配は、法定相続分に従って行われます。法定相続分は民法で定められており、相続人の構成によって割合が決まります。
| 相続人の構成 | 法定相続分 |
|---|---|
| 配偶者と子ども | 配偶者1/2、子ども1/2 |
| 配偶者と親 | 配偶者2/3、親1/3 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
| 子どものみ | 子どもで均等に分ける |
たとえば月額50万円の賃料収入があるアパートで、相続人が配偶者と子ども2人の場合、配偶者は25万円、子どもはそれぞれ12万5千円ずつを受け取る権利があります。
2.3 遺産分割後のアパート・マンションの賃料
遺産分割協議が成立し、収益物件を誰が取得するかが確定した後は、その物件を取得した相続人が、分割成立後に発生する賃料をすべて受け取る権利を持ちます。
たとえば、3人の相続人のうち1人が収益物件を取得することになった場合、遺産分割協議が成立した日以降の賃料は、その物件を取得した相続人だけのものとなります。他の相続人は、代わりに預貯金や他の不動産などを取得することで、全体としてバランスを取ることになります。
2.4 遺言書がある場合の賃貸収益の扱い
故人が遺言書を残していて、特定の相続人に収益物件を相続させる内容になっている場合は、扱いが異なります。
遺言によって収益物件を取得した相続人は、相続開始の時点から物件の所有者となるため、相続開始後の賃料もすべてその相続人のものとなります。
ただし、遺言の内容や解釈によっては争いになることもあります。たとえば「収益物件を含む財産の3分の1を長男に相続させる」といった包括遺贈の場合は、賃料の扱いが複雑になることがあります。
遺言書がある場合でも、賃料の帰属について疑問があれば、専門家に相談することをおすすめします。
3. 相続人が賃料を独占して受け取ることができない場合の問題点
相続した収益物件の賃料をめぐるトラブルで最も多いのが、特定の相続人が賃料を独占してしまい、他の相続人が自分の取り分を受け取れないというケースです。このような状況では、さまざまな法的問題が発生します。
3.1 賃料を管理している相続人が支払わないケース
賃貸アパートやマンションの相続では、故人が生前に収益物件を管理していた相続人が、そのまま賃料を集金し続けるケースがよくあります。
たとえば、長男が親と同居していて賃貸物件の管理を手伝っていた場合、相続後もそのまま賃借人から賃料を受け取り、預金口座に入金し続けることがあります。
このとき、管理している相続人が他の相続人に賃料を分配しないという問題が起こります。理由としては、「自分が管理の手間をかけているのだから全額もらう権利がある」と考えていたり、遺産分割で物件を取得したいので賃料も自分のものだと主張したりするケースがあります。
さらに深刻なのは、管理している相続人が賃料を使い込んでしまい、請求されても支払えない状況に陥ることです。数ヶ月から数年にわたって賃料が蓄積されると、数百万円から数千万円に達することもあり、トラブルの解決が困難になります。
3.2 独占された賃料は不当利得として返還請求
法律上、遺産分割が成立するまでの賃料は、各相続人が法定相続分に応じて当然に取得するとされています。つまり、一人の相続人が賃料全額を受け取る権利はなく、他の相続人の取り分を独占することは不当利得にあたる可能性が高いです。
不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産によって利益を得ることを意味します。独占された賃料は、民法703条および704条に基づいて返還請求できます。悪意の受益者(独占していることを知っている場合)には、利息もつけて返還を請求することが可能です。
ただし、独占された賃料を回収するには、相手が任意に支払わない場合、法的手続きが必要になります。
相手に資力がない場合や、使い込んでしまった場合には、実際の回収が困難になる可能性もあるため、早期の対応が重要となります。

4. 賃料を受け取るための対処法と手続き
相続した収益物件の賃料を受け取ることができない場合、法的な手段を使って解決することを検討する必要があります。ここでは、具体的な対処法と手続きの流れについて説明します。
4.1 遺産分割協議の中で返還を求める
まずは、遺産分割協議の中で賃料の清算についても話し合いをすることが望ましいでしょう。相続人全員で協議を行い、遺産分割が成立するまでに発生した賃料について、法定相続分に応じて分配することを求めます。
この方法のメリットは、裁判所を通さずに解決できるため、時間と費用を節約できる点です。協議の中で、賃料だけでなく管理費用や修繕費用の負担についても同時に話し合うことで、総合的な解決が可能になります。
4.2 調停・審判手続きでの賃料請求
話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、遺産分割の問題とあわせて、未分配の賃料についても請求することが可能です。
調停が不成立になった場合は審判手続きに移行しますが、原則として賃料の精算は審判において判断してもらうことができません。
そのため、遺産分割前に発生した賃料については、遺産分割協議とは別に不当利得返還請求訴訟を起こす必要があります。
4.3 不当利得返還請求による賃料回収
相続人の一人が賃料を独占している場合、他の相続人は不当利得返還請求権に基づいて、自分の相続分に相当する賃料の返還を求めることができます。これは民法703条に定められた権利です。
不当利得返還請求は、地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を提起することが必要となります。請求できる範囲は、自分の法定相続分に応じた金額となり、過去の賃料についても時効(不当利得返還請求の場合は原則5年)にかからない範囲で請求可能です。
4.4 賃借人への直接請求は可能か
賃料を独占している相続人から支払いを受けられない場合、賃借人に直接請求できるかという問題があります。
結論としては、法律上各相続人は自分の相続分に応じた割合で、賃借人に対して直接賃料を請求することができます。
ただし、この方法には注意点があります。賃借人が既に別の相続人に賃料を支払っている場合、賃借人は二重払いのリスクを避けるため、法務局に供託という手続きを取る可能性があります。
また、賃貸借契約の管理が複雑になり、賃借人との関係が悪化するおそれもあるため、実際に請求するかは慎重に検討する必要があります。
5. 収益物件の管理費用と賃料収入の関係
相続した収益物件から賃料収入を受け取る場合、維持管理にかかる費用についても考慮する必要があります。賃料収入をそのまま分配するのではなく、必要な管理費用を差し引いた純収益をどのように扱うかが問題となります。
5.1 アパート・マンションの維持管理費用の負担割合
収益物件の維持管理には様々な費用が発生します。これらの費用は、原則として賃料収入を受け取る相続人が法定相続分に応じて負担することになります。
一人の相続人が物件を管理している場合でも、その相続人だけが全額を負担するのではなく、賃料を受け取る権利のある相続人全員で分担することが基本です。
ただし、実際には管理している相続人が立て替えて支払い、後から他の相続人に請求するという形になることが多いでしょう。このような費用の精算についても、遺産分割協議の中で明確にしておくことが望ましいです。
5.2 賃料から控除できる費用とできない費用
賃料収入から差し引くことができる費用は以下のようなものがあります。
- 建物の修繕費
- 固定資産税・都市計画税
- 管理会社への管理委託費
- 共用部分の電気代・水道代
- 火災保険などの保険料
通常の維持管理に必要な経費は控除できますが、大規模なリフォームなど物件の価値を増加させる改良費用については、必ずしも全額を賃料から控除できるとは限らず、費用の必要性や不動産の価値上昇分をめぐって争いになることがあります。
また、管理している相続人が個人的に使用した費用や、不必要に高額な費用については、他の相続人から異議が出る可能性があります。そのため、費用の支出については領収書などの証拠書類をしっかり保管しておくことが重要です。

6. 賃料トラブルを弁護士に相談するタイミング
6.1 早期に弁護士に相談すべき理由
収益物件の賃料トラブルは、時間がたつほど問題が複雑になり、解決が難しくなります。賃料の未払い期間が長くなると、回収できる金額が大きくなる一方で、相手方の資力が不足して実際には回収できなくなるリスクも高まります。
また、賃料債権には消滅時効の問題があります。不当利得返還請求の消滅時効期間は原則として5年とされており、長期間放置すると一部の賃料について時効が成立し、請求できなくなる可能性があります。
さらに、遺産分割協議が長引くと、相続人間の関係がより悪化し、話し合いによる解決が難しくなります。
賃料を独占している相続人が使い込んでしまうケースもあり、早期に弁護士が介入することで、相手方に対して法的な圧力をかけ、問題の早期解決につながります。
6.2 弁護士ができる賃料回収のサポート
弁護士は賃料トラブルの解決に向けて、さまざまなサポートを提供できます。具体的には次のような対応が可能です。
- 証拠を踏まえた主張の整理
- 内容証明郵便の送付
- 遺産分割協議のサポート
- 調停・審判の申立てや手続き代理
- 不当利得返還請求訴訟の代理
- 強制執行手続き
弁護士が代理人として対応することで、感情的な対立を避けながら、法的に適切な手続きで賃料を回収できます。
6.3 相談時に準備すべき資料
弁護士に相談する際は、次の資料を準備しておくと、スムーズに相談が進みます。
- 故人や相続人の戸籍謄本など
- 不動産の登記簿謄本
- 賃貸借契約書
- 賃料収入の資料(通帳のコピー、管理会社の送金明細書など)
- 不動産所得に関する確定申告書類
故人の戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本など、相続関係を証明する書類は必須です。これにより、誰が相続人であり、法定相続分がどのくらいかを確認できます。
収益物件に関しては、不動産の登記簿謄本、固定資産税評価証明書、賃貸借契約書のコピーなどが必要です。賃料の金額や契約条件を確認するために重要な資料となります。
賃料収入の状況については、通帳のコピーや賃料の入金記録、管理会社からの送金明細書などを用意してください。いつからいくらの賃料が発生しているか、誰が受け取っているかを明らかにする資料です。
すでに相手方とやりとりがある場合は、メールや手紙などのやりとりの記録も持参しましょう。交渉の経緯を把握することで、より適切なアドバイスが可能になります。
これらの資料が完全にそろっていなくても相談は可能ですが、多くの資料があるほど、具体的で実効性のあるアドバイスを受けられます。
7. よつば総合法律事務所が選ばれる理由
7.1 相続チームによるサポート
当事務所には相続に特化した専門チームを設置しています。定期的に開催しているミーティングでノウハウの共有や案件の検討を行うことで、経験豊富な弁護士が依頼者にとっての最良の解決策をご提案します。
7.2 他の専門家との協力 によるワンストップ対応
相続が発生したときは、税金の申告や登記などの手続きのために弁護士以外の専門家の協力が不可欠です。
当事務所では、連携している税理士や司法書士、不動産鑑定士と共にワンストップで案件の解決に対応することが可能です。
7.3 アクセス良好な事務所
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7.4 オンラインでの相談可
親族間の相続のトラブルは精神的な負担が大きいことが多いです。当事務所は、早急なご相談に対応するため、依頼者の希望に合わせて電話の他にもZoomなどのオンラインでのご相談を受け付けております。
7.5 初回相談無料
当事務所では、相続に関するご相談は初回60分無料で対応いたします。弁護士費用が発生する場合は、事前にお見積りを作成いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
8. まとめ: まずは弁護士に相談
相続した賃貸アパートやマンションなどの収益物件から生じる賃料は、遺産分割協議が成立するまでの間、法定相続分に応じて各相続人に帰属します。たとえ一部の相続人が物件を管理していたとしても、賃料を独占することはできません。
賃料の独占トラブルは時間が経つほど複雑化し、回収が困難になる可能性があります。
相続人間で話し合いがうまくいかない場合や、賃料を支払ってもらえない状況が続く場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は法的根拠に基づいた請求や交渉を行い、必要に応じて調停や訴訟などの手続きをサポートすることができます。
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